住宅用の賃貸契約をはじめ、オフィスや店舗の賃貸契約であっても、必ず生じるのが「原状回復義務」です。しかしこれは住宅用の賃貸なのか事業用の賃貸なのかでかなりその意味合いが変わってくると言えます。なぜかと言うと、まず住宅用の賃貸は個人契約であることが多く、消費者契約法が適用される場合がほとんどですが、一方で事業用の賃貸は営利を目的としているため、人の出入りも多く、物件の損耗についても経年劣化によるものとは考えられないためです。そのような事から、事業用の賃貸契約には、原状回復についての特約が広く認められていることが非常に多いのです。つまり、事業用の賃貸契約には消費者契約法が適用されないため、原状回復義務の範囲が広くなるとも言えます。これは、特約に明記されていれば、経年劣化によるものとされるような通常の損耗についても原状回復義務を負う場合もあるということですので、契約の段階から注意が必要です。また契約によって違いはありますが、一般的に住宅用賃貸と事業用賃貸では明け渡しのタイミングも異なっています。住宅の退去は契約終了までに行い、原状回復については物件の明け渡し後にすることがほとんどです。しかしオフィスや店舗の場合、退去は契約期間が終了する2週間前まで、かつ原状回復工事は契約期間内に終了させる必要があるのです。このとき、原状回復工事が期間内に終了しない場合、工事終了までの賃料が発生してしまいます。このように、住宅用か事業用かで全くその意味が変わってくる「原状回復義務」の意味合い。特に事業用の賃貸については注意しておきたいですね。