平成23年に国土交通省が発表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」では、「原状回復を『賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること』と定義」していて、「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではない」という位置づけがされています。
ガイドラインの中では、物件を借りた人が普通に暮らす中で起きてしまう建物価値の減少は「経年変化」か「通常消耗」であると考えられています。そしてそれらは「賃貸借契約期間中の賃料でカバーされてきたはずのもの」だとされ、「賃借人はこれらを修繕等する義務を負わず、この場合の費用は賃貸人が負担することとなる」と定められています。つまり、年数を経たことなどによる不可避の消耗は、家賃を含めたそれまでの契約金を使って賃貸人が修繕費を工面するべきとされているのです。
もちろん、物件を借りている側に大きな過失があった場合、賃借人がその修繕費を負担する場合も出てきます。しかし、自然にできた劣化などについて原状回復を強いられたり、敷金を返してもらえなかったりする場合は、注意した方がよいかもしれません。国民生活センターへの敷金トラブルの相談数は、毎年約14000件(※)も寄せられています。賃貸住宅退去の際は、家主との契約について、少し慎重になってみましょう。
※2012年から2016年の五年間