原状回復工事とは、読んで字のごとく賃貸物件から退去する際に状態を元の姿に回復するということです。ですが、この戻すべき状態の認識が借主と貸主の間で食い違っていると、双方に悪意がない状況でも思わぬトラブルへと繋がることがあります。代表的な事例としてはトイレの原状回復があります。今ではトイレに温水洗浄便座を設置する人が増えていますから、長期間賃貸物件を使用している人の中にもトイレをより快適にしようと後付の温水洗浄便座を取付ける人も少なくありません。たしかにこうした設備の追加は多くの人が快適で便利だと考えるものなのですが、こうした住宅設備の変更は入居時の原状を変更したものだということを忘れてはいけません。退去の際、その部分はたとえ設備を古いタイプに戻すことになっても原状回復を行うべき箇所として判定されてしまいます。そして、便座であれば元の製品を捨てていなければ比較的簡単に回復を行うこともできるのですが、特に店舗や事務所として使用していた賃貸物件ではそうはいかないことも考えられます。業務効率を上げるためにと取付けた棚や仕切り板のように、退去時の回復には原状回復工事を業者に依頼しなければ対応できない状況も多く残ることがあります。ですから、賃貸物件の退去前、または入居時の段階でも、原状回復工事が必要になる可能性を予め考えて物件の使用方法を検討するようにしましょう。