賃貸住宅を退去時にトラブルとなることが多いのが「原状回復」をめぐる問題です。一般的に建物は時間とともに劣化するという考え方から、「経年劣化」は入居者の原状回復の義務はないとされ、入居者の「故意による破損」は入居者が原状回復しなければならない、とされています。これは不動産賃貸に関する法律でも定められています。しかし、建物の傷みが経年劣化によるものなのか、故意による破損によるものなのか、判断が難しい場合があります。一見、故意による破損と勘違いしてしまうことが多い事例としては、壁紙やクロスについた画鋲の跡です。画鋲程度の軽い損傷であれば、入居後に起こる損傷の想定内であるため、経年劣化に該当します。但し、壁に釘を打ち込んで下地ボードの張り替えが必要となる程度の場合には、入居者の負担となるケースがあります。これは通常使用による摩耗を超えると判断されることが多いためです。また、冷蔵庫やベットなど重い家具を置いてできてしまうフローリングの傷跡も、日常生活の中で想定される通常消耗と定義されるため、経年劣化と判断されます。最近、注意が必要になったのが、以前は経年劣化とされていたタバコのヤニです。昨今タバコに関する世間の風潮が変わってきており、壁紙のヤニ汚れや臭いの付着は故意の破損とされるケースが増えてきています。入居時の契約によりますが、もし「室内禁煙」と契約内容にある場合は、確実に入居者に原状回復義務が発生します。退去を控えており、どこを原状回復したらよいか判断が難しい場合は、原状回復の業者へ相談してみるのもよいでしょう。業者によっては大家さんや管理会社に確認を取り、原状回復の負担を少しでも軽くできるように努めてくれるところもあります。