原状回復ガイドラインは、平成10年3月、当時の建設省により公表されました。これは、原状回復を巡ってのトラブルが増えたために、こういったトラブルの未然防止を目的とし、賃貸住宅標準契約書の考え方や原状回復に関する裁判例などを考慮し取りまとめたものです。平成16年2月・平成23年8月には改訂もなされました。ガイドラインでは原状回復を「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定めました。つまり、原状回復とは「借りたときの状態に戻せ」という意味ではないのです。これは言うまでもない話ですね。人が住んでいれば壁も床も窓も水回りもすべて劣化します。長期間居住すれば経年劣化は免れません。また、カレンダーを画びょうで壁に留めることもあるでしょうし、タンスを置いていれば畳にくぼみができます。これらのいわゆる「通常の使用」による損耗はすべて賃料に含まれることがほとんどです。しかし未だ「賃貸住宅は借りたときの状態に戻さなければならない」と、都市伝説のように信じられていることがあります。賃貸住宅は自分が退去後も誰かの住居となりうる場所なので、確かにきれいに住む努力はしたほうが良いとは思いますが、あまり神経質になりすぎる必要は無いと思います。ただし、今はやりのDIYを趣味としている方は少々注意が必要です。ともすると「通常の使用による損耗」とは認められない場合も多々あります。壁に何かを飾りたい場合は、ベニヤ板を彫刻刀やペンキで加工して壁板風に仕上げたものを立てかけて使用する、といった方法をとる方が無難だといえます。手間もかかるし力も必要ですが、自由度が増しますし、何より気兼ねなく住まいの装飾を楽しめるのが良いですね。